NEKOPLUS+
白い息を吐きながら空を見上げた。
雲ひとつ無い。冬は空が高く感じる。
「寒くないか?」
隣を歩く男が問いかけてくる。厚志は頷いた。
「うん、平気」
瀬戸口は、今日は小豆色の着物を着こなして髪も後ろに流している。妙にこなれていて普段とは別人みたいだ。
この国で洋装が一般的になるずっと前から暮らしていたらしいから当然か。
そんな彼に頼み込まれて、厚志も今日は和装をしている。水色に繊細な花模様。男子が着るデザインではないらしいが瀬戸口の希望だし、今更気にすることでもない。
あんまり大袈裟に瀬戸口が喜ぶので恥ずかしくて額を小突いてやったが。
「厚志はやっぱり青が似合うな」
青い髪に触れてキスをひとつ。
ついこの間まで死んだような顔をしていたが、今は元気そうだ。
瀬戸口だけじゃない。猫神も、あちらこちらにいる小さな神々もいつもより元気そうに見える。
「今日は何だかみんな、楽しそうだね」
「この数日間は一年で一番参拝客が多いからな。浮かれもするさ」
「瀬戸口も」
「俺は厚志が隣にいればいつでも上機嫌さ」
浮いた台詞。弾んだ声。ウインクが飛ぶ。
クリスマスは死んだ目をして俺から離れろと言ってたくせに。
この、1月1日に神社にお参りする習慣を初詣と言うらしい。
厚志にとっては初めての経験だ。
「クリスマス?をしたり初詣をしたり忙しいんだね」
「ああ、ほんとこの国の人間はミーハーで祭好きだから困る」
「僕は楽しいけど」
「俺も正月は楽しい。くりすますも皆神社に来ればいいんだ」
無茶苦茶だが切実なことを言いながら瀬戸口はやれやれと首を振る。
目指すは花岡神社。
まだ早朝なのに人通りが多い。自分たちと同じく和装をしている人もちらほら。
階段を登る厚志を瀬戸口が騎士のような仕草でエスコートする。
こういうのは気恥ずかしいから人前ではやめて欲しいけれど、先日俺はもう駄目かもしれないなんて言っていた瀬戸口が生き生きとして楽しそうだから今日くらいはいいかななんて思う。
舞には最近そなたは瀬戸口に甘くないかなんて言われるけれど。そうだろうか?
「ふふ・・・ほら、厚志が来たから皆喜んでるぞ」
「うん・・・わかるよ」
最近は彼らの言葉も聞き取れる。伝わってくる。
厚志は境内でそっと目を閉じた。風が少しのびた青い髪を揺らす。
青い光が風に乗って周囲を舞った。
「お賽銭、あげてこうか。・・・隆之?」
少し離れたところでぼんやりとこちらを見ている瀬戸口に厚志は首をかしげた。
照れくさそうに頭をかく瀬戸口。
「いや・・・厚志は綺麗だなって」
この世のものじゃないみたいだ。他の参拝客も厚志を見ている。
確かに青い髪と青い瞳は目立つが、それだけじゃない。
「何かお願いしたの?」
「ああ。厚志は?」
「世界が平和でありますようにって」
嘘か本当か。厚志は女神のように微笑む。青い目は挑発的にも見えた。瀬戸口はくらりとして目をそらす。
除夜の鐘は108の煩悩を払うためのものだというが。駄目だな。罪深いことばかり考えている。
神社の反対側。人気のないところまで来ると瀬戸口は厚志に襲い掛かった。
ぎゅっと抱きしめて尻を触る。くすぐったそうに厚志がもがく。
「ちょっと・・・たかゆき・・・」
「俺が何を願ったか教えてやろうか?」
かつて自分が祀られていたこともある神社に鬼である自分が願いをかけるなどおかしいが。
瀬戸口は厚志の耳元で囁いた。
「この格好の厚志を犯したいって」
厚志の目が丸くなってから、じとっと細まる。
それはいくらなんでも。
「・・・君、それでも神様?」
「俺はただの瀬戸口隆之さ」
願いにも欲望にも愛にも忠実なただの人間だ。だからこの人を、自分のものにしておきたい。
厚志は尻を揉まれながら身体の底が疼く感覚に息を吐いた。
正直なのは僕も一緒か。
「着物・・・圭吾からもらったのに・・・汚したら申し訳ないよ」
「俺が謝っとくよ」
金ならありあまってるお坊ちゃんだ。セックスで汚したと言ったら流石に怒られそうだが。俺が。
「しょうがない人だねえ」
「しょうがなくないさ。姫はじめっていって伝統なんだぞ?」
「嘘」
「嘘じゃない」
「君はすぐ僕を騙すから」
「お互い様だろ?」
ちゅう、と音を立てて瀬戸口が口付ける。
いつもより体温が高く感じる唇に厚志は目を閉じた。肉厚の舌がぬるりと侵入して口蓋を舐め、歯列をなぞる。
舌を絡めると唾液を口内に流し込まれる。厚志は口で感じる快感が好きだ。
キスをされると甘えたい気持ちになる。
「んう・・・・」
瀬戸口は片手で尻を掴んだまま、もう片手を背に回した。
足に力が入らなくなった厚志の身体を支える。
「ここでするか?」
「戻ってからじゃないとやだよ」
いくら視界に入ってないとはいえ、人の声も聞こえる。
「俺はかまわないんだがなあ・・・わかってるって、怒るなよ」
厚志は恥ずかしがりだ。見せ付けるのも悪くないと思うんだが。
すん、と厚志のにおいを嗅ぎながら瀬戸口は思う。
相変わらず何もない瀬戸口の部屋。
和室の真ん中に引かれた布団の上で厚志は両腕をつき、四つ這いになっていた。
裾を大きくめくられ、男にしては丸く白い尻がむき出しになっている。
帯は解いて布団の外に投げ出されている。
厚志は本当は、後ろからよりも正常位か対面座位の方が好きだ。恥ずかしいし、顔が見えないのは不安になる。キスもできない。
それでも瀬戸口に頼まれればそのとおりにしてしまうのはやっぱり甘やかしているということなのだろうか。
「厚志の尻はいつ見てもおいしそうだな」
舌を這わせながら瀬戸口が言う。
厚志は和装が似合う。しかしこうして、布団に華やかな布を広げて尻をさらしているのを見ると別種の狂おしい感情がわいてくる。
瀬戸口の身体に宿るソレは魂の底が焦げ付くような欲望を押し殺しながらしなやかな生足に指を這わせる。シオネ。シオネ。
尻の肉に軽く歯を立てて、薄くついた歯型を指でなぞるとその指で双丘の間にある窄まりに触れた。
皺のひとつひとつを指でたどって、かつて犯され過ぎて縦に割れたそれに舌を這わせる。
「ひゃう・・・・あ、ぁん、」
舌先でつつくようにして、唇も使い性器のようなそれを愛撫する。
片手で陰嚢を揉んで性器を擦ってやる。芯を持ったそれが手の中で脈打っているのがわかった。
「あっ・・・あ・・・」
「きもちいい?」
「は・・・ん、ぁっ……あつ…い、おしり・・・あつい・・・」
厚志は着物の袖に顔を埋めながら声をあげた。
舐められたところからじくじくと熱を持つようだ。その奥も熱い。
確かに愛撫を始めてから厚志の陰部は赤みを帯びてきている。
ああ、シオネ、なんてはしたない。鬼はその様を見ながら荒く息を吐く。
誘うように尻を振りながら淫らに声をあげる我が女神。あなたは今は俺のもの。
ゆるやかに揺れる尻を瀬戸口は気がつくと平手で叩いていた。パンッと張りのある音が鳴り、びくっと厚志の身体が弾ける。
「あうっ・・・!!・・・んっ!」
熱を盛っていた内部が刺激で痙攣する。声が裏返った。
瀬戸口は自分で目を丸くした後、厚志の反応を見て猫のように笑った。
「・・・今のでイッた?」
「な、なんで・・・・なんでたたくの・・・」
「良くないか?」
瀬戸口はもう一度平手で尻を叩いた。楽しい。
厚志が悲鳴をあげる。親が子の尻を叩くように、肉が肉を打つ音。
何度か叩くと白い尻がすっかり赤くなる。
厚志がもがく度に着物が乱れた。
「あっ・・・!ひっ!んっ…やめ…てよ……っ!!!」
「厚志のやめてはあてにならないからな」
パンッ!と、また音をたてて叩く。
「ひんっ・・・!」
「厚志のここ、ひくひくしてる」
「たかゆきが・・・たたくから・・・・」
涙が滲む。おしりが熱い。本当は早く中に欲しいのに。
腰が揺れているのを見ながら瀬戸口は口元を歪める。甘えているのもかわいいが、恥じらいながら感じている厚志の色っぽさは格別だ。
もう2、3度叩いてから既に痛いくらい勃起している性器を擦り付けた。
顔は見えないがえぐえぐと泣いている厚志に尻をあげるように促す。
「ほら、そんな体勢じゃ挿れてやらないぞ」
「・・・やだあ・・・たたかないで・・・」
「もう叩かないよ」
おずおずと尻をあげた厚志の赤くなった尻たぶを左右に広げる。
亀頭を押し付けると厚志は耐えかねたように自分から尻を突き出してきた。
望みどおりにぐっと腰を進めてやると包みこむように厚志のアナルが開く。
熱い肉壁が性器をいやらしく締め付け奥へ奥へといざなった。くちゅ、といやらしい音が鳴る。
「あっ・・・あん・・・・たかゆきい・・・・」
「相変わらずスケベな身体だな・・・」
女神様のくせに。神社での精錬な雰囲気が嘘のようだ。
瀬戸口は息を吸い込むと一気に挿入した。温かい。厚志の背がしなやかに反りかえり、震える。
「ひああっ!!あっっひゃ・・・!はふ・・・ん・・・」
「ここ?」
「ぁ、っう・・・ゃ、も、ちょっ、と...ゆっく、り・・・」
「激しいのが好きなんだろ?」
瀬戸口のすみれ色の瞳が妖しく光る。
腰を掴んでずこずこと出し入れしてやる。柔らかい肉が陰茎に絡みつき、引き出す度に中のピンク色がのぞいていた。
瀬戸口の性器は普通の人間のものとはサイズも形状も違う。もっと禍々しい、凶器のようだ。
杭を打つように何度も奥を突かれ厚志は乱れた。
直腸の粘膜が熱くて、突かれるのが気持ちよくて、下腹部が切なく疼く。
「はっ・・・ぅん・・・ッあ、・・・あ、ああ・・・ん、っ」
「厚志・・・」
「・・・あ、あっあ・・・ン、もっと・・・奥・・・」
「そしたら、孕んでくれる?」
律動を止めぬまま瀬戸口が言う。
雄だとか雌だとか人間の基準など関係ない。きっとこの人なら子供くらい産める。
俺の子を孕めばいい。鬼は思う。
「ふっ・・・く…んっ! はぁ…ん・・・ったかゆ、きい・・・あ・・・はぁっ・・・」
人ならざる性器で今や限界まで広げられた後孔。
お尻の中がいっぱいなのがきもちいい。ぐりぐりと奥を刺激され厚志は身悶えた。
瀬戸口に下腹部をなでられると男の自分にはないはずの子宮の存在を感じる。
おなかの奥が切ない。
「いい・・・よ・・・たかゆきの、熱いの、いっぱい出して・・・・」
縦に裂けた瞳孔がきゅっと窄まる。
瀬戸口は厚志の身体を獣の雄のようにがっしりと抱えなおした。
そのまま小刻みに腰を揺らす。
「んっ…!ぁっ…!あっあっあぁぁっ ひゃ…ああっ!」
オーガズムに達し震える身体を押さえつけるようにして律動を続ける。
肉の締め付けが心地良い。母の胎内とはこんな感じに違いないと鬼は思う。
ああやっぱり厚志は母になるべきだ。
ぎゅっと根元まで挿入し、射精した。人間よりも濃く量の多いそれを流し込む。
ずっとイっている厚志の身体はびくびくと震えていた。流し込まれる熱に思考がおかされてしまう。
長い射精が終わった後、瀬戸口は大きく息を吐きながら引き抜いた。巨大な質量を失った厚志のアナルはぱくぱくと口をあけている。
荒い息とともに上下している厚志の身体を力任せに仰向けに転がす。
「あうっ・・・・」
乱れた水色の着物。その上で足を広げたままぼんやりとこちらを見ているその姿にまた下半身が熱を持ち勃ちあがっていく。
「厚志・・・厚志・・・・」
シオネ、シオネと呼ぶのと同じ声で呼びながら瀬戸口は厚志に覆いかぶさった。