NEKOPLUS+
「あっ・・・や、う・・・・ああん・・・」
脳を溶かすような甘い声が上がる。白く華奢な身体を瀬戸口は夢中でむさぼっていた。
首筋に顔を埋め、歯を立てると足を大きく開かせて更に深く挿入する。
快感を伝えるようにびくびくと抱きしめた身体が痙攣した。
「あっ・・・あっ・・・!瀬戸口・・・」
高い声で名を呼ばれるとぞくりとしたものが背に走る。
瀬戸口は息を荒げ、紫色の瞳孔を獣のように細めると勢いよく腰を打ち付けた。嬌声があがる。
この声は自分の頭をおかしくする効力があるようだ。
柔らかな髪を大きく指を開いて押さえ、上向かせて口付ける。
「んんっ・・・ん、ふ・・・・」
舌が絡み合う。
慣れてるなと、瀬戸口は思った。
青い綺麗なひとみが見上げてくる。幼さの残る少女のような顔立ちが今は淫らに蕩けきっていた。
瀬戸口には男を抱く趣味も、子供に手を出す趣味もなかった。だがなんだろう、この身体の甘さは。
右手を、少年の胸元に這わせる。そこには僅かな、しかし確かな膨らみがあった。その感触を楽しむように指を動かすと、背に回されていた手が抵抗するように瀬戸口の頭をぺしぺしと叩く。
「胸は・・・やだ・・・って、さわんな・・・」
「でも、気持ちいいんだろ?」
「やだ・・・」
綺麗な目から涙が零れる。事情は、聞かない。何があったのかも。
速水は自分の身体が、好きではないようだが。瀬戸口にとっては全て愛おしいものにしか感じない。
大きく息を吐くと瀬戸口は挿入したまま、速水の華奢な身体を抱き上げた。
「え・・・瀬戸口・・・・・あ、あう・・・」
顔と顔が近づく。
対面座位の形になって速水の身体をゆさぶると深く挿入される快感に背が反り返った。こうして見ると本当によく、この細い身体に自分のものが納まっているものだと思う。
一度硬直した身体が、弛緩して瀬戸口の胸元に寄りかかってきた。
「どうだ?具合は」
「や・・・うう・・・」
間近で表情を確認しながら問うと速水は恥ずかしそうに目を泳がせながら言った。
「この体勢は・・・慣れない・・・」
「どうして?」
「近すぎる」
瀬戸口は長い指先で速水の背を辿る。
伏せた長い睫が影を落とすのに、瀬戸口と名乗っている鬼は見蕩れた。一番美しいものは何かと問われれば、昔も今もただひとりの名前を答えるだろう。触れることのできる身体が目の前にあるだけで1000年の孤独に耐えてきたかいがあったと思う。
キスをして今度は瀬戸口が横になった。いわゆる、騎乗位というやつだ。速水の綺麗な身体がよく見える。
「動いてくれよ。速水」
「っ・・・」
速水は顔を羞恥に真っ赤にしながら腰を揺らし始めた。最初はおずおずと動いていたが、段々と淫らな声があがる。やっぱり、慣れている。速水は男を悦ばせる方法をよく心得ていた。
*
隣で横になっている少年の頭を撫でる。青い目がこちらを見つめてもの言いたげに揺れた。
「何だ?バンビちゃん」
「変な・・・感じだ。瀬戸口。犯されたのに気持ち悪くない」
声の調子がいつもと違う。瀬戸口は微笑して、もう一度頭を撫でた。速水が猫のように目を細める。
「普通はな、気持ち悪くならないんだよ」
「普通・・・」
速水を名乗るものは思う。確かに今まで俺は、普通のセックスなど経験したことがなかった。これが、普通なのだろうか。速水にとって、セックスとは相手がこちらの身体と心を蹂躙し、支配下に置き、欲望を満たすための行為だった。しかし今日のは違った。なんというか、甘ったるかった。
「瀬戸口はどうして僕を抱いたの。女好きのくせに」
「そっちが誘ったんじゃないか」
「そう、だけど・・・」
悩む表情は可憐でかわいらしい。行為中の淫らな顔はなんだったのだろうとさえ思う。
・・・追及はしないが、速水は男に抱かれ慣れているようだ。
それも、“無理矢理で、痛くて苦しくて気持ち悪くなる”ようなセックスしかしたことがないらしい。それを思うと瀬戸口は重く苦々しい気分になる。
くそったれ。速水はまだ、14歳だぞ。
決して、尋ねはしない。あの人が醜い自分を問い詰めたりしなかったように。しかし腹は立つのだ。
「また、したいって言ったらしてくれる?」
「・・・おまえさんがいいなら」
「やさしいね」
くすっと冷やかすように速水は笑う。瀬戸口はその身体を抱き寄せた。
シオネ、シオネ、俺の姫様。
自分がもっと早く、見つけられていたなら。絶対につらい思いはさせなかったのに。